緊急特集−利子について 
2002年06月11日

経済学の標準的論理


 合州国の大学院で経済学を学んでいる者です。経済学を研究している立場から、「新世紀へようこそ 085」にコメントさせていただきます。ご参考いただければ幸いです。

〈しかし、利子という制度は最初から成長を前提としています。どこまで行っても止まらないはずのものとして考えられている。〉

〈子供の体格の場合、成長はやがて止まります。経済の成長はなぜ止まらないと言えるのか。なぜ無限の成長が前提として認められるのか。〉

は、経済学の標準的な考え方に従えば、誤りです。すなわち、経済の成長率がゼロパーセントの状態(資本ストック量がどの日付でも同じ状態。「定常状態」と呼ばれます)であっても、(実質)利子率は正になりえます。「新古典派成長モデル」という経済学の標準的モデルに従えば、実質利子率は、資本ストック関数の一階微分として求められます。資本ストックが増えるに従って、生産量も増加するという自然な想定をするのであれば、その一階微分は正になります。

〈事業というものはすべてうまくいって利を生むわけではないだろう。中には立ち行かなくなって利子はおろか元金も回収できなくなる例もあるはず(いわゆる元も子もないという場合です)。〉

という不確実性の存在する状況というのは、確率論・統計学の助けを借りて分析可能となります。その場合であっても、上記の結論を覆すような結果が生まれるわけではないことが知られています。

 もちろん私たちは、経済学の標準的論理を無視する自由を持っています。恐らく、文末に挙げられていた参考文献はそうしているのでしょう。しかしそれは、まっすぐな木の棒を池に入れたとき、それが曲がって見える現象を説明するのに、「光の屈折」という概念を用いず、「木の精の意志」という概念を持ち出すことに等しいことのように私には思われます。経済のことを論理的・分析的に考えていこうとするとき、物理学を学ぶときのように、順を追って、体系的に学んでいく作業が必要とされます。いや、経済学もその程度までには知識を蓄積してきたというのが、正しい言い方かもしれません。


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